2005年09月18日

古川日出男 ベルカ、吠えないのか?

4163239103ベルカ、吠えないのか?

古川 日出男


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いい小説を読んだあとの読後感はさまざまだ。
ああ、楽しかった。と思う場合。
すごいぞ!と思う場合。
そして、「自分が作家でなくて良かった」と思うことがある。

最後の言葉にはきっと説明が必要だろう。古川日出男の作品は、人を圧倒する。
この作品もまた然り。

今回も思った。
「どうやったら、こんな小説が書けるのだろうか?」と。
そして感じる。自分は作家ではない。だから単純に楽しめばいい。だがもし、自分が作家だったらどうか。 作家であれば、この作家とも同じ土俵で勝負しなければならない。だが、自分と古川日出男の間の差は、絶望的に大きい。
そうであれば、自分が職業作家でないことを感謝する、ということになるのだ。

発端は、キスカ島。日本軍が駐留していて、霧にまぎれて米軍の包囲網から脱出した奇跡の島だ。(映画にもなっている。)

軍人は逃げたが、イヌは残された。 そこに、北というイヌがいた。そして、エクスプロージョンというイヌもいた。 エクスプロージョンはバッドニュースを生み、イヌたちの系譜が始まるのだ。

脈々と連なるイヌ一族の歴史に向かって問いかける。その一方で人間の歴史も伝えていく。イヌの血脈を追いつつ、歴史のイベント、国際間の緊張関係を記していく。そしてその二つは交差する。語り手は、イヌに向かって問いかける。
「イヌよ、イヌ。お前たちはどこにいる。」
そして犬は答える。
「うぉん、うぉん。」
そして、時には「オレか?」と。

素晴らしいリズムで。
そして圧倒的なストーリーテリングで。

イヌは時に、イヌ個体のことを意味しない。イヌの血を意味することもある。そう。血脈を。

「これはフィクションだってあなたたちは言うだろう。
おれもそれは認めるだろう。でも、あなたたち、
この世にフィクション以外のなにがあると思ってるんだ?」

物語が始まる前の一言だ。

古川日出男のフィクション。それを楽しめる時代にいることに感謝しなければ。

お勧め度:☆☆☆☆☆  直木賞を逃す理由があったのだろうか?

付記:ベルカとは、宇宙船に乗った最初のライカのあと、今度は生還した二匹のイヌのうち一頭の名前だ。もう片方はストレルカ。



posted by 濫読ひで at 01:02| Comment(2) | TrackBack(1) | 作家は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
暴走ネタでトラックバックしてしまってすみません(汗)。ひでさんにお褒めの言葉をいただくなんて光栄です!

ジョーカーあてのダイイングメッセージって思いつきませんでした。なんか大沢在昌くさくていいですねー。

また暴走ネタを思いついたらブログに出しますね。あまり調子にのりすぎて世間の人々から袋叩きにされない範囲で。
Posted by ぱんどら at 2006年05月21日 10:13
宿泊するなら楽天ホテルへ。
Posted by 楽天ほてる at 2006年06月07日 18:44
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Tracked: 2006-05-20 12:09