あなたにつながる記憶のすべて |
小手鞠るいの作品。
このブログではおなじみでもある。
さてこの本は一応エッセイ集といえばエッセイ集だ。あるいは私小説ともいえるかもしれない。
ただ、この本は「あなた」について書いているという点では「ワタクシ」小説ではない。
それぞれの作品は、「あなた」について客観的に書いている。
たとえば、「そのとき、あなたは、中米の永世中立国、コスタリカの海辺の村の貸別荘に滞在していた」とある。だがこの「あなた」というのは作者のことなのだ。一部分、回想シーンでは「私」というのも出ているが、基本的に「あなた」に呼びかける声の形になっている。
そしてタイトルが示すように、「あなた」が思い出す「だれか」についての話になっている。
「死者について、書きたい。その人に関する記憶だけをたよりにして。…(中略)死者だけではなくて、音信不通、消息不明、すなわち、消えてしまった人々も登場させてはどうか…」
こういうコンセプトの連作になっている。
途中には作者の作家としての魂の叫びもある。
「だから、私の本が図書館で借りられたり、古本屋で買われたりすると、すごく頭にくるんですよ。…『読みました』よりも『買いました』の方が嬉しいくらいなの」
こういう会話を交わした相手との記憶だ。
少なくとも、本を出すことで口を糊する人たちであれば一度は思うことだろう。
いろいろな人たちとの交流。かならずしも恋愛、ということではない人生での邂逅。
こんなエッセイ集があってもいい。
そして、恋愛については、過去のラブレター(とも言えるようなもの)が記されている。
彼女が送った手紙を保存してくれた相手からの心遣いによって。
お勧め度:☆☆☆☆ 記憶のかなたの人たちを時に思い出すのもいいことですね。
ラベル:小手鞠るい



