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大崎梢はよく本屋で起きる話を描いているが、これは出版社での話だ。
大手出版社、千石社の若手編集者、工藤彰彦は新人賞のパーティーのあと、古参の作家、家永嘉人を家に送る。そこで彰彦は家永の原稿を見つける。
酔いつぶれた家永の横で、彰彦は原稿を読みふける。
そして彼は言った。「この原稿、一緒に本にしましょう。きっと素晴らしい代表作になりますよ。書いてくださってありがとうございます」
家永は彰彦に言う。「だめなときには手放すと約束してくれるなら、君にあずけるよ。」
そして、彰彦の苦悩が始まる。
文芸書というのは、そう簡単に出せるものではないのだ。とくに大手の千石社では。
会社の格が上の分、作品がいいだけではなくネームバリューも必要になる。
そうでなければどんどん先延ばしになってしまうのだ。
加えて、家永から追加の話が来た。
作品内にある詩は、家永自身の作ではない。
使用するにあたり、作者の了承をとって欲しい、と。
その作者は、断絶している家永の娘だった…。
とにかく、面白い。
多くの壁を乗り越え、彰彦は本の出版の実現に向けて奔走する。
また、父と娘の間の和解のためにも尽力する。
社内の敵だった営業の若王子に頭を下げ、どうやったら会議を通るのか聴いたり、他社の編集者とのやりとりをしながら作品の行く末を考えたり。
一方、多くの辛辣な言葉と冷徹な事実も知る。
「あなたは千石社の編集者で、うだつの上がらない作家からすれば、命を握られてるも同然なんですよ。本当に出せるかどうかわからないのに、そういう立場の人が軽々しく、感動作とか、出さなきゃおかしいとか言わないで」
「たとえ話が流れても断ち切れても、編集者にとってはたくさんある原稿のひとつでしょう? 残念でしたでおしまいじゃないですか」
「千石社が本を出す。ゲラをやるから読め。POPをかけ。推薦の言葉を考えろ。一番いい場所に陳列しろ。こんなことを言って、誰が聞くんですか。書店がおとなしく従うわけないじゃないですか。でも千石社はそれできたんです。未だに通じると思っている。こっちはいい迷惑ですよ。一緒にしないでほしい」
果たしてこの本の行方は?そして彰彦の恋は?
単純に面白いだけではない。出版社のおかれた状況。大手出版社と中小の違い。作家との力関係。そのあたりを冷徹に突いてくる。
また、会っていない異母兄弟との関係や、大物作家とのやりとりなどもおりまぜて作品に深みを出している。
そして感動を入れて、ストーリーをしめくくる。
大崎梢。さすがだ。
良い作品には4.5の星をつけるのが通常なのだが、今回は5をつけてしまう。
文句のつけようがない。
面白く感動的な小説だから。
書いてくれてありがとう、と感謝したい小説だ。
お勧め度:☆☆☆☆☆ 「シロツメクサの頃」が出版されたら買います。
なお、脇役陣、営業の若王子や他社の編集者の国木戸などもいい味を出しています。
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ラベル:大崎梢




