2012年06月17日

古市憲寿 絶望の国の幸福な若者たち (6.2012) ☆☆☆☆

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絶望の国の幸福な若者たち
絶望の国の幸福な若者たち古市 憲寿

講談社 2011-09-06
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先日NHKにも出ていた新進気鋭の若手社会学者の本。
この本の紹介は難しい。というか、紹介というよりは自分のこの本に対する姿勢が定まっていないのだ。

もちろん中身は非常に面白い。だがちょっとあくも強く、作者自身がいうように、一日一章読むくらいがちょうどいい。

世代論はいつの世でもある。
だがそこで気になるのは、「自分がそこにいた時代」のことを「いなかった人間」が記していくことへの違和感だ。
その時代を体験した者と体験していない者には決定的な差がある。本や資料でしかその時代を知らない人間は、身近にいろいろな体験をした自分とはその時代に対する考えもアプローチも評価も全く違うのだ。

「小さいおうち」という中島京子の作品がある。その中で、若者は過去のことを本で読んだだけでいろいろ決めつける。だが実際その時代に生きた人間はそんなことは思っていなかったりする。
67.3%
「昔はよかった」「昔なんてひどい時代に行きたくない」人はそれぞれ考えがある。

私は80年代に学生だった。
本文19ページに「1980年の若者になりたいか?」という部分があり、その当時の親元を離れて働く30歳未満の若者のうち、エアコンを持っているのは9.9%、白黒テレビ21.5%、カラーテレビ67.3%だという。また、80年に日立が発売したカラーテレビは26型で26万5000円で、電化製品は高いという。

だが、テレビに関して言えば小型テレビは当時からそれほど高くない。私のテレビは12型カラーで34000円だった。ちなみに、今でも現役である。デジアナ変換の恩恵に浴し、ちゃんと毎日映っているのだ。
テレビを持っていない人のなかには、もともと見ない、という人もいるだろうし、または白黒を持っている、というのは家がカラーを持っているので白黒が不要だから持ってきた、というようなパターンかもしれない。実際、私の家には小学校のときからカラーテレビがあり、大学に入るときにはすでに3代目に変わっていた。初代は真空管テレビだったが。その後はトランジスタに変わったし、電気屋がテレビの修理に家に来ることもなくなった。

いろいろあるが、今の若者が「当時なんかネットも携帯電話もないから行きたくない」などと言われるのにはやはり違和感がある。
当時はそれらはなかったが、生活は快適にできているのだ。 
いまから10年後に普及しているデバイスが何かあったとして、「2012年なんか○○が無いんだよ、そんな不便な時代なんか行きたくない」と言われても今生きている人はぴんとこないだろう。


この本は読むところ、論ずべきところが多くなかなかまとめきれない。

その中でしいてあげるとすれば、「未来に希望がないと、現状に満足して幸福になる」という逆説的な考え方だ。
なるほど。若者が幸福なのは、向上心が無いというか、未来の生活が現在よりもよくなっているという幻想を抱けなくなっているところから来ているのか。だとしたら首肯できるところも多い。

頑張って働くと素晴らしい未来が待っている、という幻想はもう抱けない。
未来に金持ちになるよりは現在のワーキングプアの生活が継続する可能性のほうが高い。
だとしたらそれを前提にどうしたらいいのか。
人と人との絆で支え合い、つましくも楽しい営みができればいいのではないか?
奴隷が奴隷としてその地位に安住するのと同じような現象が起こってしまう。

とにかく、この本は少しずつ読んでもすぐお腹いっぱいになる。
批判もしたいし共感もする。

読んでいて「知らないくせに生意気言うな」と思える部分もあるし、「知らないからこんなことが言えるんだな」と思うこともある。
一方、我々にしても戦争を経験したわけではない。戦争についての記載を読む人たちは当時のことをまったく同じようには感じないだろう。その意味では、自分が生きていない時代の記載に対しては、自分だって共犯なのだ。

いずれにせよ、今の幸福な若者たちが、未来が絶望的だから今幸福なのか、それとも将来にもっと幸福が待っているよと思えないから今を幸福と思うしかないのか、いろいろ思いを巡らせられる。

論点は多い。だが、だからこそ面白い。

おすすめ度:☆☆☆☆1/2 若造、やるじゃないか!だが俺たちは幸福だったぞ。携帯電話がなくとも。





ラベル:古市憲寿
posted by 濫読ひで at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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