マネーロンダリング・ビジネス
著者: 志摩峻
出版社: ダイヤモンド社
サイズ: 単行本
ページ数: 417p
発行年月: 2009年03月
ISBN:9784478007891
本体価格 1,700円 (税込 1,785 円) 送料無料
マネーロンダリング・ビジネス
日本の中堅保険会社、中央火災が米国の中堅保険会社を買った。テキサス経済悪化のあおりをうけ、その米国の損保、TCIの業績も悪くなってしまった。
中央火災のエース、浩介はTCIに副社長の命を受け、TCIへ乗り込む。 乗り込むまでが一苦労だし、乗り込んでからも変なことはとくにない。 だが、最初の報告書を出したあたりから、浩介のまわりに変なことが起きたり、気になる話が出てくるようになった。
TCIには二つ大きな保険の問題があった。ひとつは、なぜか非常に利益率のいい労働者用保険(ワークマンズ・コンプ)。もうひとつは、回収もおぼつかないような建設会社への融資だ。
どちらも、その裏にはCEOのギルがかかわっているらしい。浩介はひそかにその2件について調べ始めた…
かなり専門用語が飛び出す小説だ。保険といのは金融の中でもとくに独自の概念や独自の商品が多いからとくにそう感じるのかもしれない。このあたりは、保険に精通していないと到底書けないだろう。
その一方、もう少し注が必要なところもある。 たとえば、本文中に「キロ」表示が出てくる。アメリカではメートル法を使うことはほぼない。 また、昼間から会社を終わらせてカントリークラブへ行って飲むようなエピソードが出てくるが、このあたりの習慣についてとかテキサスと東海岸の時差に起因するものがあるのかないのか、飲酒運転への風当たりはどうなっているか、などだ。
また、マフィアとのコンタクトについては、通常の米国の会社では報道機関であってもほぼ許されないのではないかと思う。 Code of ethicsがどこの会社にも存在しているから。
だが、別にそれほど目くじらを立てる必要もなりだろう。
作品は楽しめればいい。
保険に詳しい作者が書いた、保険ビジネスにおける詐欺スキーム。 あまりにストラクチャーが簡単すぎるのはご愛敬だ。実際はこんなキャプティブだけでなく、それにデリバティブ(TRSなど)をかませたうえでチャリタブルトラストなども活用するだろう。作者がそれを知らないはずはない。だがあまりにテクニカルすぎるし、手法を一般にまで公開するのは業界関係者にとってのプラスは何もないからだ。保険そのものは昔から存在するし、再保険も昔からある。キャプティブも大手商社などは自分で持っている。
経済行為だけではちょっと面白くない、と踏んだのか、作者は殺し屋までも登場させている。そこまでなくても、面白い小説に仕上がったのではないかと思える。
また、アメリカの法務担当は、たとえ非公開会社であったとしても各種の制約が厳しいので、TCIの役員たちこのような行為を簡単に容認するとは思いにくいような部分もある。
この本を読んでも、マネロンはできない。だが、ビジネス小説としてのわくわく感は味わえる。それに、日本企業への警鐘も鳴らしているといえるだろう。
お勧め度:☆☆☆☆ 金融ビジネス関係者はぜひに。
マネーロンダリング・ビジネス
ラベル:志摩峻
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