2009年09月21日

皆河有伽 小説手塚学校(2) (9/2009) ☆☆☆☆


小説手塚学校(2)
日本動画興亡史
ソロバン片手の理想家 
著者: 皆河有伽
出版社: 講談社
サイズ: 単行本
ページ数: 366p
発行年月: 2009年07月
ISBN:9784062155564
本体価格 980円 (税込 1,029 円) 送料無料
小説手塚学校(2)

「小説吉田学校」のようなタイトルだ。
手塚、といえば当然手塚治虫のことになる。
手塚治虫の評伝であり、かつ彼をめぐる人々も描いていく。 小説、とはいいつつ、昔沢木耕太郎もいろいろその手法について述べた「ニュージャーナリズム」に近いのだろう。長田渚左の一部作品にも近いかもしれない。
関係者へのインタビューや各種資料を再構成し、、当時の人々の動きを「小説」として「手塚は考えた」などという言い方にまとめている。

これは第二巻。虫プロ、アニメ鉄腕アトムの誕生とその時期の人々の恐ろしい仕事ぶりが描かれている。

第一章の2はいきなり「石津は…」ではじまった。これはもしかしたら…と思ったら、やはり石津嵐だった。 
石津嵐、と言っても知らない人が多いだろう。 若桜木虔氏の「宇宙戦艦ヤマト」がアニメのノベライズだったのに対して、彼の「宇宙戦艦ヤマト」は同じメンバーを基本的に使いながらも完全な別作品だった。(結末のあまりの違いに唖然!)

この作品は、基本的に「ソロバン片手の理想家」手塚、というのをテーマにして書かれている。
つまり、芸術家手塚、ではなくビジネスマン手塚、ということを前面に押し出しているのだ。 ビジネスマンだからこそ、時間と予算の制約の中で、日本式のリミテッドアニメを作り出すことができたのだ、と言える。
アップ、止め、口パク、バンクフィルムの多用など、手塚アニメが作り出した手法が描かれる。
一方、あの手塚ですら、当時には理解しえなかった問題がたくさんあったこともたしかだ。それが「国際性」だ。
手塚はできる限り自分の作品を無国籍にし、そのアニメ作品を海外でも上演できるようにした。 それでも、作品の一部は米国では放映できなかった。 それが例えば宗教上の理由だったり、あるいは差別の問題だったり。 それこそ、第1話でアトムが「サーカスに売られる」にあたって売買契約書がやりとりされる、という部分がPolitically Incorrect なので放映できない、というようなことは、当時の手塚だけでなく、今の日本人でも大部分が事前には察知できないのではないか。

鉄腕アトムは、番組としては赤字で、手塚はそれを他の収入で埋めた。それが版権収入であり、海外収入でもある。
そのモデル自体は収入の多角化として評価できる一方、製作現場への悪影響にもつながっている。
いまのアニメーターの低収入は手塚のせいだといわれることすらあるのだから。 

手塚が当時そこまで考えるはずもない。彼は理想に燃えていたのだ。ディズニー以外の漫画映画(アニメーション)が世界を席巻する日がくるように、と。

今、手塚再評価があちこちでなされている。この本は、小説の形式をとりながらもすぐれた手塚の評伝となっていると思う。

お勧め度:☆☆☆☆ 手塚ファン、アニメファンならぜひ。


小説手塚学校(2)


ラベル:皆河有伽
posted by 濫読ひで at 12:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家ま行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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