2009年06月13日

米澤穂信 秋期限定栗きんとん事件 (上・下) (6/2009) ☆☆☆☆☆


秋期限定栗きんとん事件(上)(下)
創元推理文庫
著者: 米澤穂信
出版社: 東京創元社

(上)ページ数: 254p
発行年月: 2009年02月
ISBN:9784488451059
本体価格 580円 (税込 609 円) 送料無料

(下)ページ数: 242p
発行年月: 2009年03月
ISBN:9784488451066
本体価格 580円 (税込 609 円) 送料無料

秋期限定栗きんとん事件(上)秋期限定栗きんとん事件(下)

米澤穂信の「小市民」シリーズ最新作。
秋季限定ということで、前の二つ
「春期限定いちごタルト事件・夏期限定トロピカルパフェ事件」
http://hidebook.seesaa.net/article/31726886.html

の続きになっている。

しかし。
前作の終わりは夏。主人公の小鳩くんと小佐内ゆきの二人が別れたのちの作品なので、この作品がその秋のことかと思うと大間違いだった。
二人が別れたのは夏で、そのあとは二人は別々の異性とつきあいはじめた。 小鳩くんは、クラスの女の子の仲丸さんから告白されて。 ゆきは、新聞部の男、瓜野に告白されて。

そして二人は、別々の道を進み始めたように見えた。
瓜野は、高校の新聞部として、町の連続放火事件を追いはじめた。 そして、放火事件のパターンを見つけ出したのだ。
瓜野は新聞部の新入生たちを使い、犯人を追い始める…。

推理小説だけに、ネタばれは避けなければいけない。

読後に感じたこと。
やはり、小佐内ゆきは怖い。狼だ。
そして、自分で認めたくはないだろうが、小鳩くんは狐だ。ずるがしこい。 そして二人は、お互いを認め合い、そして求めあっている。 その関係は決して恋人としての関係ではない。緊張をただよわせ、お互いを安心して攻撃できる相互依存関係なのだ。

作者は巧妙に伏線を張っている。
いろいろな事項について、瓜野の行動と小鳩の行動が対比される。また、ゆきの行動が、あとになってどんな意味をもっていたのかが説明される。最初の作品で袋をなくした吉口さんも、重要な役割で登場する。
読みなおせば読み直すほど、この作品が精緻な計算のもとに出来上がっていることがわかる。伏線を活用し、登場人物のキャラクターを最大限に生かしている。

そして…最後に出るゆきの一言は、世の中の男性の背筋を寒からしめるであろう。 小鳩くんもかわいそうかもしれない。自分のガールフレンド(?)がそう考えて、こんな行動を取るとは…。

お勧め度:☆☆☆☆☆ 栗きんとん事件って結局…そんなこととは。


秋期限定栗きんとん事件(上)秋期限定栗きんとん事件(下)

ラベル:米澤穂信
posted by 濫読ひで at 13:38| Comment(0) | TrackBack(1) | 作家や行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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